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んちゃって英語ガイド

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The Memory Keeper’s Daughter

    by Kim Edwards

タイトルがうまいよね。
えっ?
記憶を保存する人?その娘?

いったい何ってつい手に取る。
中をパラ読みすると面白いじゃん!ってつい買いたくなる。
買ったら、英語表現のやさしさについ読みたくなる。
そして一度読みはじめたらもうおしまい!
最後まで読みきらざるを得ない。


400ページ。
ちょうど良い長さかもね。
残滓のように、読み切れなかった行間が浮かんできて、
それを惜しみながらも最後まで読み終えてしまう。
読み終わると
現実が異次元なような・・

そのワープ感は、
ちょうど長い海外滞在から戻った夜に英語で夢を見、
目覚めに差し込む朝日を英語で認識するような感覚。

ページを次々めくりたくなる話の展開
英語はやさしいし、文句なく面白い。


The Memory Keeper’s Daughter_b0127538_9391514.jpg


あらすじは

1960年代のアメリカの田舎
ある医者の妻が産気づいた。
ひどい吹雪の中、やっとの思いで病院にたどりつくが、
産科医は吹雪で立ち往生、やって来られない。
医者はやむを得ず妻の出産準備にかかる。

分娩が始まる。
長く苦しんだあとやっと男の子が生まれたッ!
分娩室に安堵の気持ちが広がるが、麻酔状態のまま妻は再び産気づき、女の子を出産。

ところがその娘はダウン症特有の顔つきをしていた。
医者に大きな決断の時が来た。
実は彼の姉はダウン症でその病気に特有の心臓病を患い、知能も低く、早世していた。
姉がいたために、一家がどれほどの屈辱的な思いをし、苦労したかを彼は瞬時に回想する。

医者は、妻の嘆き悲しみを思い、
娘を施設に連れて行くように看護婦に命じた。
そして、麻酔から目ざめた妻には娘は死産であったとつげる。

一方、看護婦は娘を連れて施設にいくが、
その場の惨めな状況に暗澹たる気持ちになる。
こんな場所に置き去りには出来ない!
もっとましな場所で育てるべきと思い、医者の元に連れ戻ろうとするが、
様々な出来事で戻るのが遅れてしまう。
やっと戻ってくると、ちょうど娘の葬儀が執り行われていた・・・

そして、物語の世界が展開される。
まだまだ、障害を持つことへの世間の目が厳しく、社会の対応が不十分だった頃の話


タイトルのmemory keeperというのは
この医者が趣味とした写真撮影に使った高価なカメラの名前。
カメラを通して、
医者は世界や周りの人間を見ていたのだった。

愛する家族にも心を開くことが出来ず。
いつもカメラのレンズ越しに世の中を見ていた。
そして「カメラ」というキーワードから導き出される
医者の世界観を息子の口からこう語らせる。

Camera, his father told him, came from the French Chambre, room. To be in camera was to operate in secret. This was what his father had believed: that each person was an isolated universe. Dark trees in the heart, a fistful of bones: that was his father’s world, ・・・・

ちょっと訳し難いけど日本語にするとこんな感じかな

父は言っていた。カメラの語源はフランス語のチェンバーという単語で、室房を意味するんだ。
そして、その室房に居るという表現は、誰にも知られずに存在するという意味だ。
それは実感だったのだろうか。確かに父は「人はそれぞれが孤立した宇宙」と考えていた。
自分の宇宙で、父は心に暗い森を宿し、骨を軋ませていたのだろうか。


週末にさっと読めちゃう本。
人物描写は??ッて事もあるけど
十分楽しめる。


ところで、翻訳が難しいと思うのはChambreが大文字で始まること。

私が翻訳者なら調べるのにすごく時間がかかりそう。
どこかの特定の部屋?
フランスの宮廷?
会議場?暗い部屋?隠し部屋?
大奥?

そういえば
オックスフォード大学地区にあるThe Cameraという丸天井の建物は図書館に使われていたけど・・

cameraの語源を調べると
アサヒコムに簡潔な説明。

chamber(部屋、議場)とcamera(カメラ)が同じラテン語camera(丸天井の部屋)を語源とすることは、英語の歴史を知らない限りネイティヴ・スピーカーでも気が付かないだろう。前者は中英語期にフランス語を経由して英語に借用されたのに対して、後者は近代英語期にラテン語から直接入ってきた。英語のcamera(カメラ)とその語源であるラテン語のcamera(丸天井の部屋)とはどのような意味的なつながりがあるのだろうか。実は、英語のcameraはラテン語のcamera obscura(暗い[obscura]部屋)の後半部が省略された形である。camera obscuraは、暗室・箱の壁面に空いた小さな穴を通して外の景色などを反対側の壁面に映し出す装置で、現在のカメラの原型となったものである。(http://www.asahi.com/english/weekly/0924/06.html)
by endoms | 2010-03-23 00:47 | ブックレビュー