妖精の国
スコットランドは神話と伝説の国
ガイドのエディーは
魔法でひどい怪我をした顔を修復してもらった女性の物語
を語ってくれる。
まるで講談を聞いているようだ。
この辺に伝わる妖精の話だけれど
怪我をし顔がグシャグシャになったせいで夫に離縁された妻が嘆いていると妖精に出会う。そして妻は元の美しい顔にして欲しいと妖精に願う。そこで妖精は妻の願いを聞き入れて、
魔法は一年しか持たないと念を押しながらも、彼女に魔法をかける。
魔法のおかげで 彼女が川の水で顔を洗うとあら不思議
もとの美しい顔に変わってしまった。
さて1年後にどうなったのでしょうねえ~
そっちのほうが面白そう。
彼女は顔を洗ったという川がここ。
スコットランドの古い山のふもとにある。
水は冷たく澄んでいる。
飲んでも良いそうだ。
けど
茶色!
全くの 石狩番屋温泉の あの茶色。
ニュージーランドではガイドが飲めるといった水は全部飲んでみたけど
これは無理だ~。
でも今は後悔している。
せっかくだから飲めばよかった。。。
スコットランドの水はピートと同じ成分を含んでいるのでピートと同じ茶色。
どこの川も茶色だ。
滝も湖も沼も茶色だ
それが緑のコケとピンクのヒースと出会って風景をまとめている。
さらに言えば
高地のトイレの水洗もかなり濃い茶色の水で。
見慣れていないと、茶色の水洗には戸惑う。
昔はスコットランドにも樹木が生えていたといわれる。
それが切り出されたり、気温低下や火山灰の影響で木が生育できる環境ではなくなった。
代わりにはえてきたのが、コケ類、アシ、ワタスゲ、ヒースなどの植物。
生育のサイクルを終えてかれたそれらの植物は地面に堆積し、ピーとの層を成してきた。
数十センチから数メートルの層になっているところもあるという。
ピート燃料として今使われているものが出来たのは4.5千年前。
あちこちで切り出している場所が見られ
レンガ状のブロックになったピートは天日で乾燥されている。
ハイランドの
家々の煙突から柔らかい灰色の煙が出ている。
ああ それはピートを燃やして暖をとっているからだね。
5千年のめぐみ。
ピートは高温になっても火花が出ることはなく
室内の暖房としてはとても安全で
土間に掘られた穴において燃やしても火事にならず
その火の上に、捕れた獲物の肉をつるしておくといい加減のスモークになる。
換気は家の中心の屋根に開いた穴のみ。
ほぼ一年中 ピーとの火は絶やさなかったという。
それも当たり前だろう。
真夏でも、
温度は20度の前半程度にしか上がらない。
その暖かい日も短い夏の頂点でやってくるだけだ。
色々な海からの潮流が出会うからこの辺は霧が多い。
ハイランドの島々では、一年ですっきり晴れる日は50日程度しかないという。
私達のツアーがハイランド高地の山を越えようという朝。
曇りだ。
雨は降っていないけど・・・
さてどうなるのか?みんなが天気を気にする。
エディーは悪いニュースは伝えない。
We'll see.
Let'S hope.
と天気の質問を短いフレーズでかわす。
そして実際にひどい天気の中では
まあこんなもんだ。
That's not the worst.
Things may improve soon.
などの表現で、次に期待をつなぐ。
さすがなもんだ!
じんわり・・・きり・・・ひろがる
やっぱり。。。
山の上には湿地帯が多い。
このあたりにはピート層が厚く敷かれているんだろう。
山は深い霧に包まれていた。
こんな霧の中にすっぽり入ってしまう。
前方はほとんど見えない。
ライトをつけて、速度を落として
曲がりくねった一車線のやっと舗装してあるだけの細い山道を対向車を交わしながら
ギリギリ崖に沿って車は進んでいく。
運転しているエディーも真剣にハンドルを握り
客の私達も座席からハラハラドキドキ 言葉少なになる。
すれ違える?
ワー道路のすぐ脇は急な山の斜面
ああ 深い谷
誰も声は出さない。
緊張した静寂。
と
「Eddy 運転替わろうか?」
ひょうきんなオーストラリア人ブライアンが
絶妙なタイミングで車中の緊張を解く。
「は は そりゃー良い!」
って
笑いが広がる
それからも
まだまだ急な坂道が続き
1時間の山道のドライブは周りの景色を楽しむどころではない
無事に霧の中から出て低い場所にやってきたときには
誰もが安堵のため息をついたはずだ。