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原爆の色

As the flash flooded the desert...
The huge, expanding cloud boiled up into the skies almost directly above him like a mountain growing out of the earth.
But the most astonishing spectacle was the colors, a glorious riot of luminescent pinks and blues and greens spilling out of the cloud before themselves unfolding whole spectra of new colors, until the sky became one vast and dazzling fireworks display.(Shockwave p67)

悪天候の中
実験が行われた。
実験前には
本当に原子チェーンリアクションが起きて爆発するのかもわからず
爆発威力が強すぎて成層圏がすべて火の海になるとの恐れもあった

早朝5時30分
起爆装置に点火。

その原爆実験を間近でみた研究者は

爆音
熱風
雲の高さと形
そして
爆発の色の変化を記録した。
色の変化?

原爆のイメージに多彩な色を重ねたことはなかった。
広島で見た白黒の凄惨さが私の原爆の色だった。

原爆の爆発の色?

変かもしれないけど
感動する。
その色を目撃した科学者の感動を思った。

むかーし 
初期印象派の絵に嫌いなテーマがあった。

工場
煙を吐く煙突
スモッグでかすむ都市の空
モチーフ?
なぜ?これが?

見ないで通り過ぎた。
モネの睡蓮のほうがいい!

当時 産業革命が進み 
石炭ストーブと工場から空には煤煙
夕暮れ時には空は錆色 
クローム色だった

それが画家には
驚きの色で
新鮮で
近代化の象徴で
誇りで
うれしい喜びをあらわしたのだった。

それを知ったのは
近代都市の汚染(私にとっては)をテーマとする絵画に
嫌悪感を持ってから数十年後だった。

物事は時代と状況のパースペクティブにおかなければ
評価が出来ないと知った。

1945年7月に早朝の光の中
目を凝らして爆発を見た研究者達

眼前に変化する色は
これまで作られたことの無い色で
破壊力は計り知れず
これを落とせば戦争が終わる
勝利の色で
誇らしいものであったのだろう。

実験の3日前に広島・長崎用の原爆は
すでにサンフランシスコに向けて輸送されていた。
だから実験は成功する必要があった。
どれほどの安堵感で見た色だろ。

広島の記念館
閃光で
壁に焼き付けられた人型の黒い影の残像。

原爆の輝かしい色に酔った人は
その残像は想像しなかったろう。

灼熱の白い爆発で
黒い雨で 苦しんだ人々のうめきはまだ聞こえていない
by endoms | 2009-02-05 00:14 | ブックレビュー